再生不良性貧血といった難治性貧血症で
定期的に輸血を受けている患者さんにとって、
鉄過剰症による致命的な合併症の出現を防ぐために、
唯一鉄キレート療法は有効と考えられています。
また近年この鉄キレート剤療法が
ガン細胞の増殖の進行を抑える治療方法としても注目されています。
実際に私が受けた鉄キレート療法のこと、貧血と肝炎と鉄の関係の基本のお話など、
少しでも分かりやすくご紹介できたらと思います。
C型肝炎および赤血球輸血による鉄過剰症
鉄過剰症とは体内に過剰な鉄が蓄積される症状です。
普段の食事から摂取する鉄分は、体内に必要な成分量を保つ体の仕組みから
不要なものは排出され、体内で一定量が保たれます。
しかし、赤血球を輸血すると鉄が内蔵に付着してしまい、
ふつうの状態では体が積極的に鉄を排出しようとしないので、
徐々に蓄積されてしまいます。
このように人の体内には、過剰な鉄を排泄する機能が備わっていないため、
継続的に輸血を行うと鉄が体内に蓄積され始めます。
また肝臓がC型肝炎ウイルスに感染すると、抗酸化物質が少なくなったり、
鉄を貯蔵する調節機能に異常が起きるという理由から、
体内への鉄の吸収率が高くなります。
もともと鉄の貯蔵庫である肝臓にますます鉄が貯まりやすくなることになります.。
肝細胞内で過剰になった鉄が酸化する活性酸素が原因で肝ガンの発生が高まります。
また輸血による鉄過剰症は、時として生命を脅かす危険性のある疾患です。
鉄過剰症は血清フェリチンの値と受けた輸血の単位数によって総合的に診断されます。
鉄過剰症の診断基準
赤血球輸血量20単位以上 および 血清フェリチン値 500ng/mL以上
鉄キレート療法開始基準
血清フェリチンの値が1,000ng/mL以上、継続的に40単位の輸血が一つの目安。
鉄過剰症による合併症
過剰な鉄により、多臓器に広範 な障害が認められることが確認されています。
主なものとして、
- 肝臓には鉄を蓄積する働きがあるため、過剰に蓄積される鉄が原因で肝機能障害が起こり、
肝臓の線維化、肝硬変、肝ガンなどの肝臓病を引き起こします - 心臓では心筋障害、心不全などをもたらします
- また、糖尿病を引き起こす原因にもなります
いずれも命に関わる病気に進展する危険性があるため、
そのリスクを軽減するために鉄キレート療法が行われます。
鉄過剰症や肝臓がんの抑制・予防に有効な鉄キレート剤療法
鉄キレート療法は輸血に起因する鉄過剰症に対する唯一の有効な薬物治療法で、
鉄と結合する薬剤を用いて、尿中や糞便中への鉄の排泄を促進させます。
この治療により、輸血による鉄過剰症の患者さんの予後の改善、
余命を延ばすことが報告されています
(なお余命一年以上が期待できない患者さんには、鉄キレート療法は推奨されていません)
また、C型肝炎などの治療方法である体内の
過剰な鉄を除去するために血を抜く瀉血(しゃけつ)療法は、
再生不良性貧血のような輸血依存の難治性貧血には向きません。
従来使われていた鉄キレート剤 デフェロキサミンは、
週 5 ~7 回の点滴または筋肉注射が必要 だったため、
患者さんの通院や針刺しの負担が大きなものでした。
しかし2008年6月より、日本でも1 日1 回 の飲み薬タイプの
鉄キレート剤デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)が発売され状況は大きく変わりました。
副作用
吐き気や下痢といった胃腸症状、腎臓の検査値の異常、
発疹(ほっしん)など殆んどが軽度~中度のものです。
重い副作用として、腎不全や肝障害、
胃潰瘍など消化性潰瘍などの報告もありますが、
発現率は1%未満と低いです。
報告・確認されている鉄キレート剤の効果
鉄キレート療法の目的は、過剰な鉄を排出し、
鉄過剰症による致命的な合併症の出現を回避することですが、
血清フェ リチン値を下げることにより、治療前か らの肝機能障害が改善されたり、
造血機能が改善し輸血が不要になったと いう報告も複数ありましたので、
C型肝炎や再生不良性貧血の改善につながることも期待されます。
数ある肝臓病の中でも、とりわけなぜC型肝炎について
瀉血などの低鉄療法が有効であるかというと、
C型肝炎では未だに抗ウイルス療法が有効でない症例が
3分の1程度に存在するという事が理由です。
言い換えれば、他のA型やB型では根治治療が確立してますが、
C型肝炎では3分の1程度で抗ウイルス薬が効かず、
病気が完治できない状況にあります。
またC型肝炎は肝発癌に進行するということが次第に明らかにされていることから、
炎症を抑えるということの重要性が他の肝障害に比べてより重要になってきました。
もちろんC型肝炎についてもIFN療法等が有効な場合は、それを優先すべきです。
それらの治療法が有効でない場合に、C型肝炎から肝癌の発生を抑制するために、
瀉血や低鉄療法が考慮されます。
2011年8月、山口大の研究グループにより、
抗がん剤で治療効果のない進行性の肝臓がんに対し、鉄キレート剤療法で
ガン細胞の増殖に必要な鉄分を除去することで進行を抑えるという
有効な報告が発表されました。
これは、除鉄療法の肝癌予防法としての有効性を強く示唆するものです。
C型肝炎でもっとも怖いのは高い頻度でそのまま肝癌へ移行することです。
私自身もその恐怖は常にあります
肝癌になってしまう前に・・・
肝ガン予防法として、C型肝炎新薬の開発や
経口鉄キレート療法が積極的に一般に広く行われ、
1人でも多くの方がC型肝炎を卒業できたら良いなと思います
※輸血後鉄過剰症や肝臓がん治療・発肝ガン抑制効果が確認、報告されている
鉄キレート療法ですが、重大な副作用も存在します。
次回は予期出来なかった副作用。
私が鉄キレート療法で経験した副作用のことや
治療費などについてお話ししたいと思います
難しい内容で、上手にお話できたか不安です
頭を使ったので栄養補給
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