32章|C型肝炎治療に救世主

テニスの王子さま 4月18日(月)

月曜日。
朝の回診・・・ちょっと憂鬱。

それが今朝はちょっと違ってた。

「はい、おはよう~どうですか?」
S先生のお決まりの挨拶に、

「おはようございます
ボチボチです」と振り返ると、

そこにはS先生の姿はなく・・・
爽やかな笑顔。

「あれ?
私の願望が幻想を見せてるの?」

すると…
「この方はC型肝炎で再生不良性貧血の患者さん。
今、一か八かでインターフェロン治療してます。
珍しいケースだから勉強になるよ!」

声のする方を見ると、いつものS先生のニヤリ顏。
爽やかな笑顔の男性は研修医のT先生。
今週から消化器内科と血液内科の研修だそうで、
たしかに私のケースはもってこいかも。

それにしても何てゆう紹介するんだ?
T先生も戸惑い、笑顔がひきつっている。

その日の夕方の回診はT先生1人。
「やったー」 小さくガッツポーズ。

日に焼けた顏に真っ白な歯が爽やか!
テニスをしているらしい。
回診が楽しみになる日がくるなんて…。

このT先生との出会いが
私をC型肝炎治療とS先生から救ってくれるとは・・・
まだこの時は分からなかったけど。

 

レベトール剤中止 4月19日(火)

身体の痛みは相変わらず。
原因不明であることも相変わらず。
毎日昼食後に飲む1錠のロキソニン(鎮痛剤)で、どうにか耐える。

シャンプーやドライヤーの時に腕が上がらないという状況は辛い。

S先生曰く、
「私も年々、手が上がらなくなってる。
あなたの場合は貧血ですけどね~」

たしかに血小板だけでなく、
最近ではヘモグロビンや赤血球などの
副作用である貧血の数値の下がり方が顕著だった。

これはインターフェロンの副作用というより、
治療開始時から服用してるレベトール剤の副作用。
飲み始めて1ヶ月後に副作用の進行をおさえるために
一日3剤のところを2剤に減薬した。

ただでさえインターフェロンの注射も隔週でしか行えていないのに、
レベトール剤の減薬は痛い。

なのでS先生も私も、
短期集中で行けるとこまでインターフェロン治療を行い、
できる限りの結果を出したいという思いから、多少の危険は覚悟だった。

この頃は身体の痛み以外は目立つ自覚症状もなく、
身の回りのことも普通に出来ていたので、
差し迫ってる事態に気づいてなかった。

「これだけ貧血になってるのに、
あなたの場合もともと貧血だから身体が鈍感なんですね」
とS先生に言われ、

こんな時血液内科のK先生は、
「エコですね」と言ってくれるのにな~くらいに思ってた。

夕方の回診。
「夕方はT先生でありますように!」と念じたはずが、
パタパタと廊下に響く足音。

振り向くとS先生が、
「レベトール中止!」と一言。
声と顔が恐い。

差し出された検査結果。
「うそ!ほんと?!」と思わされる数字がそこにあった。

 

今日の検査結果
血小板(×10,000/μl):1.6万
白血球(μl):1500
赤血球(×10,000/μl):121
ヘモグロビン(g/dl):3.9←マジでヤバイ気が。。。

AST(IU):41 ALT(IU):57
r-GPT(IU):92

 

C型肝炎治療|葛藤と焦り 4月20日(水)

朝の回診。
難しい顔のS先生と気まずい私。

C型肝炎の治療を進めるたびに問題が続出。
それでも進むしかなかった。
出来ることをするしかなかった。

S先生も私も覚悟の上だったが、
予想より事態は深刻かもしれない。
昨日の検査結果がそれを示していた。

治療をして何とかC型肝炎を治したい私と、
救おうとしてくれるS先生。
志しは一緒なのに・・・

朝の回診。
葛藤と焦りが2人の間に重い空気を運ぶ。

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