最近テレビで倍賞千恵子さんによる
C型肝炎啓発CMをよく見かけます。
インターフェロン(INF)フリー新薬の経口2剤が発売され、
C型肝炎の治療がさらに進歩したことを伝えています。
今日は新薬の薬剤耐性と遺伝子検査について
お話したいと思います。
難しい薬剤耐性のお話。
理解不十分な点も多々ありますので、
お気づきの点がありましたら、ご指摘いただければ嬉しいです。
インターフェロン(INF)フリー経口2剤新薬
2014年9月3日、BMS(ブリストルマイヤーズ)より発売された
日本発のインターフェロン(INF)フリー新薬の経口2剤
ダグルインザ錠とスンペプラカプセルは直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)です。
直接作用型抗ウイルス薬(DAAS)とインターフェロン(INF)薬の違い
インターフェロン(INF)薬は自己の免疫を刺激し、
C型肝炎ウイルスを攻撃してウイルスを退治します。
しかし今回発売されたお薬ダグルインザ錠とスンペプラカプセルのような
直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)は、直接C型肝炎ウイルスの増殖に作用します。
プロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、ポリメラーゼ阻害薬
ただし直接作用と言っても、ウイルス自体を直接攻撃するのではありません。
C型肝炎ウイルス(HCV)が増殖するためには
C型肝炎ウイルス(HCV)自身が作る特定の3種類のタンパク質が必要となります。
- NS3:C型肝炎ウイルス(HCV)の蛋白を適切に切断するプロテアーゼ
- NS5B:C型肝炎ウイルス(HCV)のRNA複製を司るポリメラーゼ
- NS5A:C型肝炎ウイルス(HCV)複製過程の複合体形成で主役を演じる
直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)は
これらの3種類のいずれかのタンパク質の合成を阻害することで
増殖を止めるお薬、阻害剤です。
直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)は作用する部位により、
プロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、ポリメラーゼ阻害薬
の3つのグループに分類できます。
阻害剤は単独で使用すると、C型肝炎ウイルス(HCV)が遺伝子の変異を来たし,
直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)が効かない耐性ウイルスに変化してしまいます。
そのため今まではインターフェロン(INF)との併用治療として使用されてきました。
しかし今回インターフェロン(INF)フリー治療では、以上の3つの中から
2つのグループ、プロテアーゼ、NS5Aの阻害剤を組み合わせ、
ダグルインザ錠とスンペプラカプセルというお薬で治療します。
インターフェロン(INF)フリー経口2剤新薬と薬剤耐性問題及び遺伝子検査
ところで、インターフェロン(INF)フリー治療でのウイルス駆除率は
100%ではありません。
この事は薬剤耐性変異によることを示します。
薬剤耐性とは
簡単に言いますと、細菌やウイルスに薬剤が効かなくなることをいいます。
その原因には(1)細菌の構造からもともと薬剤が効かない場合(自然耐性)と、
(2)細菌の性質が変わって効かなくなった場合(獲得耐性)の2つがあります。
NS5A阻害剤「ダクルインザ錠」と NS3プロテアーゼ阻害剤「スンベプラカプセル」の耐性問題
治験の結果からも、治療前からNS5A阻害薬に対する薬剤耐性ウイルスが
およそ10%前後のC型肝炎患者さんの体内に存在することが分かっています。
そのケースの場合、治癒率が半分近く又はそれ以上に低下すること、
及びNS3プロテアーゼ阻害薬に対しても耐性が生じることがが確認されています。
更に治療に失敗した場合、C型肝炎ウイルス(HCV)が薬剤耐性変異を持ち、
NS3とNS5Aの両方に対する耐性を獲得した多剤耐性多重変異ウイルスが
高い率で残ることが分かっています。
インターフェロン(INF)フリー療法は副作用が少なく
患者さんの負担も軽減されるというメリットもあります。
しかし治療に失敗すると、薬剤が効きにくいウイルスが増えてしまう可能性があり、
同じグループの薬剤では治療に失敗しやすくなるというリスクがあります。
インターフェロン(INF)フリー療法の場合、投与する前に耐性がないか、有効か否かをきちんと把握し、適切な処方を行うことが肝要だとされています。
主治医:「今回の新薬プロテアーゼ阻害薬やNS5A阻害薬に対する耐性ウイルスが出現すると、
別のプロテーゼ阻害薬やNS5A阻害薬にも耐性を示すようになります」
私:「2剤に対して耐性が出来てしまったら、残る1剤で治療出来ないのですか?」
「インターフェロン(INF)を使用せず、単独グループの薬剤での治療だと
耐性化するリスクが高いとされてるので、行うべきではありません。
もし今回の新薬2剤でC型肝炎ウイルス(HCV)が耐性を獲得すると、
ポリメラーゼ阻害薬しか効かなくなりますが、
日本ではまだ、ポリメラーゼ阻害薬とペグインターフェロン(INF)を組み合わせた
治療法は開発されてないのが現状です」
「3グループの中での組み合わせ方によっては選択肢が増えますか?」
「次のインターフェロン(INF)フリー療法はポリメラーゼ阻害剤とNS5A阻害剤の
組み合わせになるので、もし治療が失敗した場合でもプロテーゼ阻害剤があるので、
これだとペグインターフェロン(INF)、シメプレビル、リバビリンの3剤療法があるのですが、
チエさんの場合はインターフェロン(INF)が使えないので・・・」
「私の場合は本当に一発勝負なんですね・・・?」
「いずれにしても耐性遺伝子検査をして、
その結果に基づきチエさんにとって最適な治療方法を考えていきましょう」
「遺伝子検査ってインターフェロン(INF)治療前に行うのと同じものですか?」
「いえ違います!」
「え~どう違うんですか?」
「インターフェロン(INF)の効率を調べるのは個人の遺伝子を調べる遺伝子検査です。
それに対して新薬の耐性及び著効率を調べるのは、
肝炎ウイルスの遺伝子を調べる遺伝子検査です」
「なんか耐性とか難しい話が多くて頭がゴチャゴチャで。。。」
「簡単に言うと、その人の持って生まれた遺伝子を調べるのか、
その人が感染したC型肝炎ウイルスの遺伝子を調べるかの違いですね」
「あ!なんとなく分かった気がします」
インターフェロン(INF)の効率を調べるIL28B遺伝子多型検査
人間にはインターフェロン(INF)の効果がある体質の人と効果がない体質の人がいます。
その体質の差を決めるのがIL28Bという遺伝子です。
この遺伝子の発見により、現在では簡便な血液検査で
インターフェロン(INF)治療効果を予測することができるようになり、
効果的な治療を受けることができるようになりました。
インターフェロン(INF)フリー新薬の効率を調べる耐性遺伝子検査
薬剤投与前においてNS5A領域のY93H変異を保有する患者さんが
10%前後存在することが報告されていて、
経口薬剤に対する耐性を示すY93変異を検出することで、
ダクラタスビル/アスナプレビル併用療法の効果予測および治療法選択の
指標となることが分かっています。
抗ウイルス療法を行う前に、C型肝炎ウイルスの遺伝子型(HCVジェノタイプ)や
耐性遺伝子(HCV薬剤耐性変異)の事前検査を受け、
信頼できる医師と共に自身に合った戦略的治療を行っていただきたいと思います。
薬剤耐性ウイルスに対しての治療法
また薬剤耐性ウイルスに対しては、インターフェロン(INF)が効果的です。
直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)が効かない耐性型のC型肝炎ウイルスであっても、
インターフェロン(INF)は耐性ウイルスの存在はそれほど問題になりません。
もし、ご自身のC型肝炎ウイルスが薬剤耐性のある型であった場合や、
ウイルスの耐性遺伝子を治療開始前に調べられないのであれば、
IL28B遺伝子多型検査の結果によっては、
インターフェロン(INF)を含む治療法の選択を優先することも必要だと思います。
どんなに先生に聞いても難しくて
チンプンカンプンになってくる薬剤耐性のお話。
少しでも、どなたかにご参考いただければ幸いです。
次回受診予約時(10月中旬)に病院側の検査体制が整っていれば、
その日の血液検査で耐性遺伝子(HCV薬剤耐性変異)検査を受ける予定です。
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寒暖の差が激しいので、
くれぐれも風邪などひかぬようお過ごしくださいね
現在、薬剤耐性の遺伝子検査の結果待ちで毎日どきどきです。 待ちに待ち、やっと始められると喜んでいた所、検査結果次第ではうけられません。 一日も早くどんな人でも受けられることを祈っています。
今日子さんご訪問ありがとうございます(^^)チエです。遺伝子検査を受けられたのですね。それでは結果が出るまでは、期待と不安で落ち着きませんよね(^^;
私は病院側の態勢が整い次第ということで、血液を保管していますので、いつ検査に回してもらえるか?まずそこからドキドキの毎日です。
待ちに待った新薬が出来た喜び、凄く分かります。本当に一日でも早く、どんな方でも安心して受けられる薬が出来ることを切に願います。
そして、今日子さんにとってよい方向に話が進むといいですね(^^) 寒くなりましたので温かくしてお過ごし下さいね(^^)