37章|C型肝炎治療方針の決断と家族の絆
インフォームド・コンセント 4月30日(土)
先週の回診時、今後の治療方針の話になった時にS先生に、
「主人が一度、先生とお話ししたいようです」と言ってみる。
またあれこれ言われるかな?
と覚悟はしていた。
すると、「良いですよ。週末の方がいいですよね?」
意外にもスンナリOK
「でも週末は先生お休みですよね?」
「だから当直の週末ですけどね!
平日だと、ご主人が大変でしょ?」
あ~だこ~だ言って、ご機嫌を損ねるといけないので、
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
とペコリ。
そして今日がその日。
普段は私からしか病気の事を聞けない彼の中で、
C型肝炎についての理解、疑問や不安が少しでも解消出来ればと思ったのと、
私が話すS先生のことが大袈裟でも嘘でもないことを知ってほしかった。
病室で待機してると看護師さんが、
「診察室でお待ちです」と迎えにきてくれた。
「病室で大騒ぎにならずにすんだ~」と、
ちょっとホッ。
S先生の待ってる診察室のドアをノックする。
ドキドキ。
「どうぞ」の声で入室すると、
笑顔のS先生がこちらを向き座っている。
先生と彼の挨拶もすみ、本題の病気のことと、今後の治療方針の話題へ。
真剣に話し合う2人を見てて、
「どうか失礼がありませんように」と、
S先生が彼に酷い事を言わないか気が気でない。
「それでチエさんはどう思いますか?」
とS先生に聞かれても、上の空で聞いてた私は即答出来ず、
「ちゃんと聞いてなさいね」と彼に言われ、
「すみません」と謝る彼に、先生は微笑んでいる。
私の心配とは裏腹に面談は順調に和やかに、無事終了。
「先生に話しが聞けて良かったよ」
夫婦2人で決断しないといけない課題も増えたけど、
今回の場を設けてもらって良かったと思った。
「でも聞いてたイメージとは違うね」
との彼の言葉にはちょっと微妙な気持ちになる私ですが・・
夫婦で決めた治療のこと 5月1日
昨日の三者面談での課題だった今後の治療方針。
貧血の副作用が顕著な今、
これからもインターフェロン治療を続けるか?
続けるとしたら貧血はどうする?
今回の治療を通して、
自分が再生不良性貧血であることを痛感することになった。
普段は大人しくしている病気も危険を感じると大暴れする。
でも少しでも望みがあるのであれば、
C型肝炎治療をやり始めた今、ここで諦めることは出来ない。
私には、次がないかもしれないから。
ただ、むやみに治療を続けて、貧血が命取りになっては本末転倒なので、
あと数回の投与を行い、ウイルスの減少率が思わしくない場合は中止。
その間は輸血で貧血に対処する。
S先生は相変わらず、輸血によって新たな病気になるリスクを心配されていたが・・・
私と彼は色々と悩み夫婦で決めた。
MRIをSドクター拒否 5月2日
昨日から原因不明の頭痛が一段と激しさを持って襲いかかり、
ロキソニンやマイスリーも効かず、殆ど眠れず朝を迎える。
原因不明の体の痛みに続き、頭痛に悩まされてはいたが、
こんなに酷いのは初めて。
今後のこと…週末に頭と神経を使いすぎたのかな?
朝の回診の時、S先生に
「念のためMRIをしたい」と言ってみる。
速攻で却下!
「なんでよ~?」とは言えなかった。
言葉にできない 5月3日 (火)
昼食後、ベッドでマッタリしていると、
「やあ」そう言い顔を覗かせたのは弟。
結婚し一児の父となり江の電沿線に住んでいる。
入院する前日に弟から小包が届く。
中に入っていたのは、お守りと元気になるCD。
私の入院が長引くと心配して、
「お見舞いに行くよ」と度々メールをくれた。
気持ちは嬉しかったし私も会いたかった。
でも、震災後で誰もが多かれ少なかれ大変な時に、
負担をかけることは出来るだけしたくなかったので、
「退院したら会おうね」と返信していた。
「なんで?」ビックリする私に、
「連休だから実家に遊びに来たよ。これカミさんから」
と花のバスケットを差し出す。
前もって私に言うと、
「来なくていいよ」と言われるので、姪と2人で連休を利用し実家帰り。
まだ幼い姪を母に預け、お見舞いに来てくれた。
車で病院まで連れてきてくれた 彼が、弟の後ろで微笑んでる。
休診日でひっそりしている外来の待合室のソファー。
私を真ん中に3人並び、地震の時のこと、それからのこと、
姪の成長のこと、色々と話した。
色々と話したけど、私も弟も病気のことは一言も話さなかった。
他愛ないことで3人で笑ったりと、彼がいてくれたおかげで、
弟と2人しんみりならずにすんだかな。
あっという間に時間が過ぎていた。
通用門のところまで見送りに出て、
「じゃあ気をつけてね」と言った私に、右手を差し出した弟。
弟の右手に自分の右手を重ねる。
お互い力強く握りしめる手から、
「大丈夫だよ!みんなついてるから!」
「大丈夫よ!ありがとう!」
言葉にできない言葉が交わされた。
入院2カ月目 5月4日(水)
2カ月前には、まだこうして病院にいることは想像すらしていなかったな。
絆 5月5日 (木)
子供の日の今日、母が嬉しいものを持ってきてくれた。
それは姪からの手紙。
一緒にお見舞に行くと駄々をこねた姪に母が、
「じゃあ、お見舞いのお手紙書こう!」
全文ひらがなの手紙は可愛い花の絵のおまけつき。
産まれてから何度会ったのかな?
ものごごろついてからは?
一緒に過ごした時間はそんなに多くはないはずなのに…
とても私を慕ってくれる可愛い姪からのメッセージ。
子供の日に子供から大きな愛を受けとった日。