33章|C型肝炎治療の危機
生命の危機? 4月21日(木)
C型肝炎の治療入院前は血液内科を2ヶ月毎に受診していた。
入院直前の2月、次回の予約を入れたのは4月21日。
その時は、とっくに退院してると誰もが思っていたから。
インターフェロン治療を始める時、
S先生と血液内科のK先生とで連携して臨んでくれることになる。
なので貧血数値がどれだけ下がっても、
K先生もいてくれるから大丈夫だと思っていた。
入院患者が外来受診をする時は、
外来の合間に呼ばれる。
今日も午前中のどこかで呼ばれるんだろうな?と思っていた。
看護師さんに名前を呼ばれ移動しようとすると、
「ごめん。外来からの要請で採血してくるようにって」
と看護師さんが申し訳なさそうに私を見る。
「うそ?火曜日のデータがあるからいいって思ってた」
採血しにくい細い血管の私にとっては1回の採血は重大問題。
さらに追い打ちをかける看護師さんの言葉、
「今、検査室に連絡したら、担当のMさん今日お休みだって…」
に私は固まる。
「なので私が…」
看護師さんがチャレンジしようとするが、
やはり私の血管を前に固まってしまう。
両腕で失敗した看護師さんは救いを求めてナースステーションへ。
そこで現れたのは想定外の人物。
「一昨日の検査結果あるからいいのにね?」
その声の主はS先生。
慌てた看護師さんは採血枕(腕の枕?)を持って行ってしまってた。
S先生に、「そこのそれ取って」と言われて見ると、
そこにあったのはBOXティッシュ。
・・・唖然。
「採血は久しぶりだな」
とS先生は私の腕を見てニヤリ。
あまりの動揺で言葉が出ない私。
これでは絶対に私の血管は逃げまくるだろう。
ああ神様~。
「よし!」
S先生の掛け声と共に痛みが…ない。
全く痛くない。
「うそ?」
思わず出た言葉。
「じゃあ、よくKと相談してください」
とS先生は病室を出て行く。
検査室のMさんがお休みの時は、
「S先生もありかも?」と思ってしまうくらいの凄腕。
夕方6時すぎ、ようやく外来で呼ばれたらしい。
看護助手さんが迎えにきてくれるが、なぜ車椅子?
「楽ちんだし、いいっか」
と車椅子で連れて行ってもらうことに。
診察が終わってる時間なので、患者さんの姿もなく、
ほとんどの照明がおとされてる。
車椅子の車輪音が静まりかえった外来に響く。
その音を聞きつけてか、K先生が診察室から出て迎えてくれた。
「先生~お久しぶりです」
と私が手をふりながら言うと、いつもは穏やかな表情のK先生の顔は厳しい。
「餅は餅屋!」
先生がいきなり言った。
なんのこと?私に何が起きてるの?
K先生は今日、私の火曜日の検査結果を見てビックリしたようだ。
それで急きょ改めて血液検査をすることに。
「どうしてこんなになるまで…」
のK先生の言葉は重く、私が自覚している以上に私の状態は悪いようだ。
それで車椅子なんだ。
「明日の輸血のオーダー入れます」
というK先生の言葉にハッとする。
「ちょっと待って下さい」
私は思わず言ったが、
「待てません」
と先生はキッパリ。
こんな激しいK先生を始めて見る。
私は何も言えなかった。
K先生の診断結果を手に病室に帰る。
ちょうどS先生の夕方の回診が始まってるようだ。
「S先生に報告するの嫌だな」と思っていた。
廊下で皆に聞かれる状態で何を言われるか不安だったから。
それを察知したのか看護助手さんが、
「診断結果わたしてきますよ」
と言ってくれた。天使だ~!
病室に戻りしばらくすると、
パタパタと廊下に響く足音。
「来た!」
予感的中!S先生現る。
「あなたは輸血でC型肝炎に感染したのに。
また輸血したら、今は分からない違うウイルスに感染するリスクがあるんですよ?」
険しい表情でS先生は一気に話す。
病室中にその声が響き渡る。
私は泣きたくなる。
S先生に言われなくても、1番そのことを不安に思っている。
でもあの時のK先生から伝わってくるものは、
輸血を受け入れなければならない危機感があったんだもん。。